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宇宙人になった男(ミステリー小説)

 最近私はものすごい睡魔に襲われながら眠りに着く、それは夕飯を食べた直後から始まり、テレビを見て風呂に入るにつれだんだんと強まっていき10時か11時になる頃には完璧に意識を失ってしまう。

 そして毎晩のように夜中に死にそうな程の痛みが訪れる、しかし目を開けようとしても真っ暗で何も見えない。

 やがて貧血になったような目眩と頭の奥からザーっという音とともにまた意識を失ってしまう。

しかし目覚めると何事も無かったかのように体はぴんぴんしていて、生まれ変わったかのようにすっきりしている。

そんな状態がもうかれこれ2週間はたつ。

 もちろん何かの病気ではないだろうか?という疑いを持ち病院で精密検査を受けてみた。

しかし結果はすこぶる健康、かえって以前より健康になってるぐらいだった。

驚きなのは毎日二箱も煙草を吸っているにもかかわらず肺がピンク色だった事だ。

普通に考えたら真っ黒なはずだ。

その証拠に私が今の職場に正社員登録をするにあたって受けた健康診断での肺は真っ黒とまではいかないにしても真っ黒手前迄はいってたと記憶している。



もちろんその時の担当の医師にも煙草はなるべくひかえるように注意を受けていた。

 カルテのすり替えか何かの間違えではないかと疑ったがどうやらそれもないらしい。

 では何かの難病か?微生物が体中を綺麗にしてくれる代わりに毎晩睡魔と激痛がするとか?

 一応医者に相談してみたがそんな病気は聞いた事も無いという・・・。

しかも医者からは健康でどこも異常が見あたりませんと太鼓判を押されてしまった。

 何も異常が無い事を彼女に報告すると顔をほころばせて、良かったね、と笑う。
その顔は心底安堵したような、そんな顔だった。

 だけど私の心の安寧は訪れない、今日もまた睡魔が訪れる、そしてまた激痛が走る、そして何事も無かったかのように一日が始まるんだ。

 こんな激痛がするのならいっそ寝ないで起きていようかと頑張って睡魔を振り切ろうとしたがそんな私の頑張りもむなしく今日も真面目な小学生かの様にうとうとと眠ってしまう。
これは何かの呪いだろうか、うとうとと意識がなくなる瞬間、私は最近見た夢の事を思い出した。

 人間ではない何か異様な物体に自分の身体をまさぐられる、しかし私はそれを見ている事しかできない、身体は動かず言葉も発せられない。そんなおぞましい夢だった気がする。

 あれはいつどこで見た夢だったろうか、自分の家ではなかった気がするが思い出せない。
よく私は夢の続きを見ながら、あぁこれは以前に見た夢の続きだなと思っている時があるのだがあんなおぞましい夢の続きは一生見たくないものだ。
なぜならその夢の中の生物は私以外の人間もまさぐり、臓器という臓器を取り出し、観察し、全く同じ様な臓器の偽物を作りだし、そのパーツでもって一から人間を作り出したのだから。

 あの夢がもし現実ならあそこにいた人間は、いや、もしかしたら今生きている私すらも、あの謎の生物の作り出したレプリカという事になる。
だから絶対それはあり得ない事なのだ、あれは夢であり夢でしかなくそれ以上でもそれ以下でもないのだ。




 私の名前は松田幸雄、どこにでもいるサラリーマンだ。
サラリーマンと言ってもビシッとスーツを着て会議をしたり接待したりする方ではなくて泥と油にまみれた工場で機械のように、歯車のように日がな一日同じ事を繰り返す工場勤務のサラリーマンだ。
就職難のおり、たまたま契約社員で潜り込んだ職場だが私が無気力なりにも黙々と何も言わずに仕事をこなす姿を見て正社員にしてくれた奇特な会社だ。

 彼女と出会ったのは1年前、工場での職場恋愛だった。
12月の工場の忘年会の帰りにべろべろに酔っぱらった彼女を家が近いからという理由で押しつけられた。

 彼女の家に着いてベッドに寝かせると顔からものすごい汗をかいていて額に手をあてると熱が出ていた。見捨てる事もできたが万が一の事があって後からまわりに責められるのもつまらないなぁと思い看病した。

看病といってもその辺のタオルを濡らして額にのせて、後は悪くならないように見張ってるだけで彼女が目覚めたら早々に帰る予定だった。

 しかし彼女が目覚める前に私の方が眠ってしまっていたらしい。朝目覚めると彼女は起きていて私はソファーの上で横になっていた。

 起きた私は久しぶりにご飯が炊ける匂いというのをかいだと思う、それは忘れかけていた人間の温もりにも通じるなんだか懐かしい香りだった。

 彼女はなんと2人分の朝ご飯を作ってくれたのだ。
人が自分の為に作ってくれた食事というものを食べたのは実に何年ぶりだろうか。
こんなに心に染みる朝ご飯は生まれて始めて食べるような気がする。

 それ位私は人の優しさに飢えていたのだろう。
彼女の事は今まで全然知らなかったのだが何故か僕達は心を分かち合う事が出来た。なぜなら。

 私も孤独だが彼女も又、孤独だった。からだ。

 彼女も私も人生に絶望したはぐれものだったのだ。

 それ以来彼女は俺になつくようになり、私たちははそのまま付き合うようになり一ヶ月前ついに結婚した、新婚旅行はグアムだった。



 思えばこの激痛は新婚旅行のグアムのホテルに泊まっていた時から始まっている。
最初は食中毒かもしくはやっかいな伝染病ではないかと思って焦ったが翌日なんともなくなっていて逆にすっきりしていたのでそのまま気にする事もなく帰国したのだがまさかこんなに長引くとは夢にも思わなかった。

 やっぱり新種の伝染病なのだろうか・・・やっぱり海外は怖いなぁ、保険とか入った方がいいかなぁ、などと思いを巡らせながら夕飯を食べる。

 彼女の作る夕飯はお世辞にも凝ったとは言いがたいがそれなりに美味しい物だった。
ハンバーグとか生姜焼きとかカレーライスとか、下手したら自分にも作れるんじゃないかと思うようなメニューのオンパレードだ。
少々マンネリというかヘビーローテーションというか悪く言えばワンパターンのきらいがあるがまあ食べれるのでよしとしよう。

 第一私の安月給でご大層な料理を毎日作られたらそれだけで我が家は破産してしまうかもしれない。新婚一ヶ月にして一家離散だ。それだけは避けねばなるまい。

 ちなみに今日の夕飯はオムライスにサラダにワカメスープだった。ごはんさえあれば10分ぐらいで作れそうなラインナップだ、しかもワカメスープはインスタントだしオムライスの味付けはケチャップオンリーだ。
そんな手抜き飯にもかかわらず上にハートやらLOVEやら書かれていると幸せを感じる事ができるから不思議だ、世界7不思議にも匹敵する人体の不思議だ。



 結婚するにあたって彼女は会社を辞めた、元々人間不信で会社での人間関係にも疲れていたみたいだったので辞めるにあたって私は何も言えなかった。
結婚したのだから私が責任を持って彼女を幸せにしなくてはならない。
そんな責任感めいた物が私の中にも芽生えつつあった。

 しかし、だからといって私達は子供を作ろうという事には至らなかった。
もちろんそういった行為をしない訳ではない、大人なのだからやることはやってるし、だがその上での避妊は完璧で、まかりまちがってできてしまったとしても私達は躊躇無くおろすだろう。

 子供を殺さないという選択はそれがたとえ世間的に正論だろうがなんだろうが子供にとってはよけいなお世話でしかないという事を、世界は必ずしも幸せであふれているわけではない事を、人間不信な僕達は知ってしまっていたから。

 これは何も二人で話し合って決めた訳では無い、出会った時からの二人の共通理念に基づく考察だ。
だから彼女も同じ考えなのかどうかは聞かなきゃ解らないし、もしかしたら聞いても解らないかもしれない。

 しかしこうも思う、もし、彼女に子供ができて、そして彼女が産みたいと言ったなら。私は彼女におろせと言えるだろうか?多分言えないと思う。
それどころか自分の分身とも言える家族ができる事によって多少なりとも幸を感じる事ができるのではないだろうか。

 たとえ地獄の様な人生にその子が絶望する運命にあろうとも。



 彼女を疑い始めたのは最近見た夢のせいだ。

 夢の中で私は自分で自分をのぞき込むように上から見下ろしている。
自分で自分を見るという事態はなんとも不思議でまるで幽体離脱のようだがそもそも霊魂という存在自体を私は認めていないので、そうか、これは夢なんだ、なるほど、このふわふわした感覚は夢以外にはありえない。
よく夢の中で夢なんだなと実感する事があるがこれもまたそうなんだろうなあと思いながら眺めていた。

 するとそこへ彼女がやって来た。
そういえばもう結婚しているのに妻でなく彼女というのも考えてみれば変な話だがそこは新婚ほやほや、まあいずれ慣れて人に話す時は妻と呼ぶようになるだろうが後1年くらいはかかるだろう。

 すると、私は信じられないような光景を目撃してしまったのだ。
あまりの光景に私はあ然とした。
その夢はリアルで残酷でとても悲しい夢だった。

 その夢の中で彼女は私の顔にタオルを被せ、右手に持っている古びたナイフで私と思われる物体に何十という穴を空けていくのだ。

 とたんに夢である筈の私の身体に激痛が走る。
これはどういう事だろう。
まあおそらくは寝ている筈の私の身体になんらかの衝撃がかかって痛さを感じているのだろう、しかし寝ている私にかかる衝撃とは何だ?まさか今見ているこの光景ではないだろうな?

 血しぶきは部屋中に飛び散り、彼女の顔を、手を、身体を真っ赤に染めていく、だけど彼女の手は止まらない、彼女の顔は無表情で何を考えているのかわからない。

 もう止めてほしかった、こんな悲しい夢は見たくない。うんざりだ。
こんな夢はいい加減醒めてほしかった。

 「も・・・てくれ・・・。」
 私は目を瞑った、夢の中で目を瞑った、目を瞑ればこの夢から醒めると思っていた。

 身内に殺される夢というのは実はこれが始めてではない、あれはまだ私が一人暮らしを始めたばかりの頃だ。
どういう展開でそんな夢になってしまったのかは思い出せないが今でもはっきり覚えている感覚はある。
そう。
 


 私は実の母親に殺された。
夢を見た。
あの時母は出刃包丁の様な物を持ち、やおら私の心臓を貫いた。
ところで起きた。

 起きた私はなんでこんな夢を見てしまったんだろうと、なんだか悲しくて情けなくて、朝っぱらから馬鹿みたいに泣いていた。

 そんな夢を以前から見ていたせいもあるだろう。
いくらこれがリアルでも、激痛が走っていようと、私はそれが夢である事を疑わなかった。
その証拠にその夢を見た次の朝には私は紛れもなく生きていたのだから。
 


 しかしそんな私の物騒な夢を夢じゃないと裏付けてしまう証拠の品が発見されてしまった。

 あれは私がキッチンで捜し物をしていた時だ、たしか爪切りだか耳掻きだかを探していたと思う。

 流し付近の引き出しを空けた瞬間、私の思考は一瞬停止した。
なんとそこにはあの夢の中でしか見たことが無いような古びたナイフと睡眠薬と思われる錠剤が一緒になって隠されていた。

 ハルシオン(Halcyon)、トリアゾラムを使用した睡眠導入剤(睡眠薬)の代表的な商品名。
レイプや強盗などの犯罪によく使われる為、イギリスなどでは販売を中止されているスピード型の睡眠薬。

 なぜそんな物が我が家のキッチンの引き出しにあるんだろう・・・、いや・・・考えてみればこれで最近の不可解な眠気の原因が判明したようなものではないか。
しかしそれを認めるという事は同時に彼女を疑う事になる。
結局私は彼女に引き出しの中身の事を聞くことが出来なかった。

 しかし臆病者の私は完璧に彼女を信じる心持ちにもなれずびくびくと彼女を観察してしまうのだ。
それはあたかも戦争で敵兵に見つからないように移動する兵士のように、もしくはDVを受けている女のように、虐待を受けている子供のように、びくびくと彼女を観察してしまう。

 そんな日々が続くとふと、一人になった時や無心になって仕事をしている時など、なんだか悲しくて情けなくて、あの母に殺された夢を見た直後のように涙が出てきそうになるのだ。

 こんな苦しい生活は終わりにしなければならない。そう思い何度か彼女にあの引き出しの中身の事を訪ねようかとしたが、答えを聞いてしまうと今の外面的には幸せな生活が壊れてしまうのではないかと思い、やっぱり聞けずにいる弱い自分がいた。

 そもそもこんなびくびくした新婚生活なんてあまり幸せとは思えないが。
それでもその時の私は少しの幸せにすがりついて生きていたかった、いくらそれが浅はかだと思われようと粉々になってしまったとしても一つ一つ拾い集めて宝箱にしまって大切にしていたかったんだ。

 なぜなら私にはもう彼女以外に誰もいなかったからである。

 彼女以外に誰もいないなどと言うと多分皆私の事を可哀想な身の上なのだろうと勘違いするだろうが実はそうではない。




 もちろん親も友人も健在で何の問題も無いのだが、いつの頃だろうか記憶が断片的に消えていくというか書き換えられているというか、知っている人間である筈の親や友人の記憶がまるで本で読んだだけのような薄っぺらい物になっていくのだ。

 そうなるともうそれらは人ではなくてただの情報としてしか見えない自分がいた、ただの情報なのでその人に何かを求めるとか感情的に話し合うといった事ができなくなる。

 情報はただの情報でしかないので私はあたかも恋愛シミレーションゲームをやるかのように只々選択肢を間違えないように会話をつないでいく。
怒らせないように、悲しませないように、間違えないように、慎重に選択肢を選んでいく。
しかしただの情報なのでそんなコミュニケーションのふれあいで自分の心が埋まる筈もなく、心にすきま風をビュービュー空けながらひっそりと静かに消えるように皆の前から消えていった。
ようは一人でいる方が楽だし何より誰の迷惑にもならないからだ。
まあ帰ってこいと言われれば形式的には帰ってそれなりに会話もするのだがそれらはもう心許せる場所とは言えなくなってしまっている。

 そんな世間的には人間不信の根暗に分類されるであろう自分に豆芝のようについて来る彼女に、猫のように懐いてくる彼女に私の心は少なからず癒されていたし満たされてもいた。

 だから私には彼女を疑う事も、信じぬく事もできなかった。
夢は夢のままでいてほしかった。
あんな物発見しなければ彼女の事を信じ続ける事ができたのに、幸せなままでいられたのに・・・。
たとえそれが嘘で塗り固められたプラスチックの宝石だとしても。
私の中ではどんな高価な宝石よりも輝いていた。



 その日、いよいよ私はこらえきれなくなってある作戦を決行してみた。

 その作戦とはどうにか彼女にばれないようにして睡眠薬が入っていると思われる夕飯を食べないという作戦だ。
しかし全部は駄目だ、さすがに全部はばれると思い私は何か一種類、睡眠薬を入れやすそうなおかずに絞って残す事にした。

 今日の夕ご飯は目玉焼き付きハンバーグ、コールスローサラダ、コンソメスープ、ライスだった。

 (よし、この中ならハンバーグがあやしいな、ハンバーグにしよう)

 私はねらいを定めてポケットに忍ばせていたポリ袋を広げて太股の間に挟んむとコンソメスープを急いでのんだ。

 「ごめん、おかわりもらえるかな?」

 「早!もうのんだの?」

 「ぅん、なんかおいしくて。」

 そっか、と彼女は立ち上がりキッチンの方に向かう。
我が家のダイニングテーブルとキッチンは近いなりにも死角があり入り口にはのれんがある為うっかり見られる心配は無い。
 がチャッとガスコンロが付く音がする。
彼女の作るごはんのスープは殆どがレトルトなのでこれはやかんを火にかけた音だ、水の音は聞こえなかったのでちょっと冷めたお湯を温めたのだろう。

 (よし、これで音が鳴るまで大丈夫だ。)

 よくせっかちな人は音が鳴るタイプのやかんでも音が出る前に火を止めるが彼女はそうではなかった、よほどその音が好きなのか二三回ピーピー鳴るまで止めない。
普段はうるさいなあと思っているがこんな時は丁度良い、しかも半分は温まっているのですぐに沸くため、沸く間の時間にこちらに戻ってくるという事が無かった。

 私は広げていたポリ袋にご飯の上に乗せて水気を切っておいたハンバーグを急いで入れてあらかじめ空にしておいて何気なくと見せかけてテーブルの横に置いておいた会社の鞄にしまいこんだ。



 その日は思った通り眠くならなかった、時計を見ると11:40分を少しまわった所だ。
いくら眠くならないとはいえ眠ったふりをしなければ彼女に怪しまれると思い、私はベットに潜り込んでいた。
思えば眠くならずにこんな時間迄起きていられたのは何日ぶりだろう、やっぱり彼女はあの睡眠薬を夕飯に盛っていたのだろうか?
だとすればこのままここで眠ったふりをするのは危険ではないのか?

 私の頭の中にナイフを振りかざして何度も何度も私の身体を刺していく彼女の姿が現れた。

 いつ彼女に刺されるか解らない緊張感で私は布団に横になってたら気持ちよくって間違って寝ちゃった、という事も無く、眠ったふりをしつつも心臓はバクバクしていた。

 11:50分、静かにドアを開ける気配がする。
よほど気を使っているのだろう、神経を研ぎすましていなければ解らなかったくらいの静かな音で彼女が部屋に入ってきた。

 薄目を開けて人物を確認する、暗くて表情までは解らなかったが雰囲気といい背丈といい彼女に間違いなかった。
彼女はベットの後ろの方でなにやら掛け布団を少しずつ引っ張っていた。掛け布団が腰の位置迄脱がされる。
 すると、私の顔におもむろにタオルが被せられる、こうなるともう気配とカンに頼るしかない。私は神経を研ぎすまし、高校時代に授業の必修科目でやらされた剣道を思いだし、ありったけの神経を研ぎすませまくってナイフを避け、そのままぐるんと一回転してベットから落ちた。

 私が避けたせいでベットのシーツとマットに穴が空いてしまったがそんな事は気にしていられない。

 すぐさま私は証明のリモコンで灯りを付ける。

 「ちょちょっ!待って!待って!な何してんの?」

 と言って彼女から理由を聞こうとするとナイフを持った彼女は焦ったような困ったような顔をするとベットの下の引き出しの中から棒のような物を取り出して引き延ばした。
1メートルはあるかと思われるよく学校の先生が黒板の文字を指すときに使う指し棒の様なそれに触れるとビリビリと身体に電流が走って頭が真っ白になって私は気絶した。



 次の日の朝、日曜日、目覚めると彼女はいなかった。

 キッチンの引き出しを見ると睡眠薬とナイフは無くなっていた。

 ベットの下を見ても昨晩のあの電流が流れる武器は無かった。

 しかしマットに空いたナイフの跡が昨日の出来事が夢ではなかったという事実を思い知らせる。

 このまま彼女は帰ってこないんじゃないか?と思った。

 彼女の携帯に電話をかけてみる。

 「あなたのお掛けになった電話番号は・・・」

 電源を切られていた。

 起きたら彼女を問いつめようと思っていた私は放心状態でソファーに横になり、無気力に色々考えながら頭に入ってこないテレビを眺めていた。

 普通妻がいきなり連絡も無く家からいなくなったら探しに行くとか知人に聞くとかしそうなものだが昨日のあまりの出来事に何もする気が起きなかった。

 それに心のどこかで彼女は必ず私を殺しに来る。
という根拠の無い確信があった。

 11:50分、意外にも彼女は現れなかった。
私はベットには入らず電気を付けたリビングのソファーでテレビを付けずに待っていた。

 私がその異変に気づいたのは時計が11:55分を少し回った時だった。
それまで何ともなかった身体が突然痺れはじめてきたのだ。
しかも掌を見るとなぜかひとまわり大きい、私はとてもじゃないが座っていられなくなってソファーに横になる。

 すると嘘みたいに膨らんだグローブのような掌がだんだんと溶けだしてきた。

 私は信じられなくなって無理矢理身体を動かして起きあがろうとしたが起き上がれずテーブルにうつ伏せになる。

 綺麗に磨かれたガラスのテーブルには手が溶けるよりももっと信じられないモノが写っていた。



 テーブルに写っているはずの自分の顔はもはや人間の顔も形もとどめていないどろどろとした異様な物体だった。

 しかしそのどろどろとした物体に私はなぜか見覚えがあった。そうだ、あの夢に出てきた宇宙人のような化け物だ!

 わたしが自分自身の姿に絶句していると突然扉が開きナイフを持った彼女が入って来て私の体を刺していく。
どろどろの身体でもしっかり起きているので今までで一番痛かった。
しかし私はもう抵抗する事はなかった。

 なぜなら彼女がそうやって私の事を助けていたんだという事がなんとなく解ってしまったからだ。

 そうやって彼女は何も言えずに相談も打ち明ける事もできずに、こんな身体になってしまったかわいそうな私の為に一人で戦っていたのだろう。

 もうそれだけで十分じゃないか、今迄の私の人生の中でいったい誰がここまでしてくれた?見捨てる事も出来たはずなのにこんなちっぽけな男の為に。

 頭の中が真っ白になってきた、痛さはもう感じない、ただポカポカと小春日和のような暖かさに身体も心も包まれていた。


 翌朝、私の身体は元に戻っていた。
昨晩のあのどろどろとした地球外生命体のような姿はどこかに消え、紛れもない自分の身体がそこにはあった。

 いったい私の身体はどうなってしまったというのだろう。まるで自分の身体が自分の身体では無いように感じられる。

 そうだ、彼女は、彼女はまだ家にいるだろうか?もしかしたらまた消えてしまっているかもしれないな、と思い、彼女を捜してキッチンに行く。
すると彼女は何事も無かったかのように鼻歌を歌いながら朝ご飯を作っていた。

 「ん?どうしたの?幽霊でも見たような顔して?」

 私はそこはかとない違和感を感じていた、そりゃあそうだ、昨日あんな事があったというのに彼女は明るすぎるのだ。

 昨日の事をごまかしているのだろうか?とも思ったがそれとも違う、なんていうか今迄見たことも無いくらいに明るいのだ、それはまるで人が変わってしまったかのようだった。

 「朝ご飯できたわよ。」

 そう言う彼女の声を聞いてテーブルに向かう、しかし食卓に乗った朝ご飯は私が想像していた物とはかなり違った。

 それはどろどろとしたピンクのような紫のような異様な色をした今まで食べた事も無いような不気味な、とてもじゃないが食べ物とは言いがたいモノだった。
しかもソレは四方六方にぐちゃぐちゃうごめいている。

 「いっただきま~っす。」

 と言うと、彼女はとても美味しそうな顔をしてソレを食べていた。

 「?どうしたの?食べないの?」
 と、不思議そうな顔をして彼女が訪ねる。

 「あ・・・あぁ。」

 私はおそるおそるソレをスプーンで口に運んでみた。
不思議とソレは意外にも美味しかった。
私はソレをガツガツと一心不乱に食べた。

 「あら?どこかで事件かしら?やあねえ。」

 耳を澄ますとパトカーらしき音が聞こえる。
それはだんだんと大きくなり、そして止まった。



 「な~にしてるんですか?速見さん?」

 その男が屋上のベンチで大学ノートに書かれた日記を読みながら昼食をとっていると交通課らしい婦警3人が男を取り囲んだ。

 「お昼ご一緒してもよろしいですかぁ?」

 彼の名前は速見薫、容姿端麗、頭脳明晰で若干26歳という若さで警部迄上り詰めたいわばエリートだ。

 「何読んでたんですか?」

 と、婦警の一人が訪ねる。

 「あぁ、1年前に片付いた事件なんだが、どうやら犯人が先日獄中で自殺したらしいんだ。」

 「あ!私その事件知ってます!犯人が頭おかしくなっちゃって自分は宇宙人だとか言ってたやつですよね?」

 と別の婦警が答える。

 「あぁ、奥さん殺して食べてたってやつ?」

 と、クールそうな婦警が答える。

 「ぶー!!ちょっと!やめてよ!ご飯中に!」

 とマイペースにしっかりごはんを食べていた婦警が叫ぶ。

 「やっぱ殺人犯なんて皆頭おかしいんだって、宇宙人なんているわけないじゃん。いるんだったら見せなさいよっての。」

 どうやらかの事件は署内で都市伝説のようになっているらしかった。

 「結局皆妄想でしょ?大体幽霊とかUFOとか騒いでる連中なんて皆妄想か幻覚みてるんだって、脳がおかしくなってんのよ。」

 などと霊能者が聞いたら殴られそうな事を好き勝手言う婦警達だった、が。

 「そうとも限りませんよ。」

 と、意味ありげに言ってみる。

 「「「へ?」」」

 3人の婦警の声が綺麗にハモる。

 「世の中には妄想や幻覚だけでは片づけられない不思議な事が多々あるものです、」

 婦警達は無言で男の言葉に注目した。

 「知っていますか?自殺した犯人の、その後の遺体がどうなったか。
警察病院の霊安室に安置してたその遺体は。」

 ごくり。婦警達はまるで怪談話を聞くかのように目を見開く。

 「次の日の朝には消えて無くなっていたんです。
そして彼が消えた跡にはどろどろになったピンク色の液体が残っていたらしいですよ。」





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