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スノウ(一時間ドラマ分のシナリオです)

○葉隠荘・全景(朝)
   ログハウス風の二階建てのロッジ。
   吹雪が降り積もっている。

○葉隠荘・リビング・中(朝)
   銃声の音
窓からは吹雪が見えている。
   南条秀樹33がはあはあと息を切らしな   がら右手に鉄砲を持っている。
南条の近くには頭から血を流した女1、女2、男2が倒れている。
南条、左手で頭を掻きむしる。
南条、窓から見える吹雪を眺める。

○山奥峠停留所
辺り一面雪が吹雪いている。
屋根付きの停留所に防寒具を着用した三宅八郎22と吉池絵里香22が震えている。
三宅の履いている手袋はスマホ用。
三宅、スマホを見ている。
スマホには神奈川でおきた銀行強盗の記事が書かれている。
三宅、空を眺める。
三宅「送迎車来ないですねぇ」
絵里香、三宅を睨み付ける。
絵里香「ってゆーか超寒いんですけど、どう
 にかしてよ」
三宅、たじろぎ。
三宅「どうにかって言われましても駅に着い たとたんこの雪ですから」
絵里香、腕組みをして三宅に詰め寄る。
絵里香「だいたいねぇ、あんたが雪山行きた
 いって言ったんでしょ、責任取りなさいよ
 ね」
三宅「ひぃ~、責任と申しましてもぉ、吉池 氏だってのりのりでついてきたじゃないで すか~」
絵里香「あ?何か言った?」
三宅「いえ、何も」
絵里香「しかも雪山来たって言うのにスキー
 もスノボもしないってあんた何しに来たの よ」
   三宅、中指で眼鏡の縁の眉間部分を触   る。
三宅「解ってませんねぇ、吉池氏、この雪山
 はかの有名なサウンドノベル、雪男の夜の
 舞台になったいわば聖地ですよ」
三宅、絵里香に詰め寄り人差し指を立   てる。
三宅「そしてこれから行く葉隠荘はその惨劇 の舞台!スキーやスノボーなんてしてる暇 ないんですよ」
絵里香「だからって何で天気悪いの解ってて
 来んのよ!もうちょっと天気良い日選びな
 さいよね!」
   三宅、首を振り眼鏡を触る。
三宅「いやいやいや、吉池氏、聖地巡礼の醍
 醐味はその舞台になった日時をも合わせ舞
 台の空気感を味わう事にあるんですよ」
絵里香「もぉいい、あたし行く」
   絵里香、雪の中を歩き出す。
三宅「ちょっちょっと?吉池氏?雪吹雪いて
 ますよ?」
絵里香、三宅の方に振り返り。
絵里香「こうしてても寒いだけだし、とっと とペンション行ってあったかい物食べるわ よ」
絵里香、また歩き出す。
三宅「それもそうですね、待って下さ~い、 吉池氏~」
三宅、スマホをポッケに仕舞い、ふらふらしながら絵里香を追いかけるが、途中クシャミをする。
絵里香、振り返り、やれやれというように頭を抱える。

○道
先程よりも雪の勢いが強い。
三宅の眼鏡に雪が被っている。
絵里香、スキー用のゴーグルをかけて歩いている。
三宅「さっ寒い~、死ぬ~」
絵里香「ちょっと、まだペンション着かない の?」
三宅「そろそろ着いても良さそうなもんです
 けどねぇ、ホームページには徒歩20分と書
 いてあったし」
絵里香「かれこれ1時間は歩いてるわよ、凍
 傷になったらどうすんのよ、責任取りなさ
 いよね」
三宅「責任と申しましてもぉ吉池氏、あんま
 り怒ると皺が増えますよ」
   三宅、はっとし、手で口を押さえる。
絵里香「なんですって~?」
   絵里香、拳を上げる
   三宅、手で頭を庇う。
三宅「いっいや、吉池氏は怒った顔より笑っ
 た顔の方が可愛いなあと言いたかっただけ です」
絵里香「そう?」
   三宅、手をごますりポーズ。
三宅「それはもう~、いや~、吉池氏の美し い笑顔には百万ドルの夜景も霞んでしまい ますよ~」
絵里香「そ、それならいいのよ」
絵里香、拳を下ろす。
   三宅、ほっとし、胸をなで下ろす。

○葉隠荘・全景
三宅と絵里香、ほっとした顔で建物を見る。
絵里香「やっと着いたわね」
三宅「ええ、長い道のりでした」
絵里香「結局2時間も歩いたわよ、死ぬかと
 思ったわ」
三宅「ええ、僕も途中三途の川がちらほら見
 えました」
三宅、腕時計を見る。
三宅「まあ駅から5分は実は15分と言います し、雪も降っている事をふまえれば妥当な 時間かと」
絵里香「そぉ?私はてっきりあんたが道間違
 えたのかと思ったわ」
   三宅、眼鏡を触る。
三宅「その辺は心配いりません、この日の為
 に先輩巡礼師の方々のブログでこの辺り一
 帯の地形は把握済みですから」
絵里香「そ、とにかく入るわよ、早く暖かい
 物食べたいんだから」
   三宅と絵里香、建物に向かって歩き出   す。

○同・玄関・前
三宅と絵里香が玄関のドアの前に立っている。
絵里香、ゴーグルを外し、体の雪を払う。
絵里香、ドアノブを回すが鍵が掛かって開かない。
絵里香「あれ?鍵掛かってる」
三宅「留守でしょうか?」
絵里香、三宅をじろっと見る。
絵里香「あんた本当に予約取ったんでしょう ね?」
三宅「取りましたよ~」
絵里香「本当に~迎えが来なかった事といい
 どうもあやしいのよね~」
   絵里香、チャイムを押そうとする。
三宅、下を見るとドアの下の雪が赤く染まっている。。
三宅「待って下さい!」
絵里香、手をピタッと止める。
絵里香「何よ」
三宅、四つん這いになり、血に染まっ   た雪を手に取る。
三宅「血痕が」
絵里香「結婚?結婚はまだ早いわよ~、私達 まだ学生だしつき合って半年しか経ってな いし」
三宅「違います吉池氏、そのけっこんじゃな くて」
絵里香「解ってるわよ、ボケただけよ、ここ
 は女らしく絹を裂くような悲鳴で叫んどく
 べき?」
三宅、絵里香に向かって手をストップ   の形に出す。
三宅「止めて下さい吉池氏、キャラが違いす
 ぎます」
絵里香「あのさあ三宅君、殴ってもいいかな あ」
   絵里香、笑顔で拳を作る。
三宅「ひぃ、ご、ごめんなさい、調子に乗り
 ました」
   三宅、たじろぐ。
絵里香「解ればいいのよ」
   三宅、ほっとする。
三宅、血に染まった雪を見ながら。
三宅「もしかしたら中で何かあったのかもし れません、吉池氏、ヘアピン的な物はもち あわせていませんか?」
絵里香「ああそれなら」
   絵里香、頭からヘアピンをはずし三宅   に渡す。
絵里香「はい」
   三宅、ヘアピンを伸ばし鍵穴に刺す。
   絵里香、鍵開けをする三宅を覗き込む。
絵里香「器用ね~鍵開けなんてよく出来るわ ね~」
三宅「ええ、大学のミス研の先輩に教わりま した」
絵里香「ミス研?うちの大学ミス研なんてあ った?」
三宅「京大のミス研ですよ」
絵里香「京大って、随分遠いわね、関東です らないじゃない」
   三宅、眼鏡を触る。
三宅「知らないんですか?吉池氏、大学のサ
 ークルって部外者でも入れるんですよ、ま
 あうちの大学はどうだか知りませんけど」
絵里香「あっそ」
   鍵があく。  
三宅「あいた!」
   三宅と絵里香、目を見合わす。
三宅「開けますよ」
絵里香「い、いいわよ」
   三宅、ごくりと唾を飲む。
   三宅、ドアを開ける。
   内開きのドアがギィィと音を立てて開   く。
   玄関の中には背中が血みどろになった   篠原祐二20がうつ伏せになって倒れて   いて、体から流れ出た血がドアに向か   って流れている。
三宅「ひっひぃぃぃぃ」
三宅、その場に尻餅をつく。
絵里香、男を見て口に手を当てて驚く。

○同・玄関・中
   絵里香、中に入り篠原に近づく。
三宅、ドアの前で尻餅をついている。
絵里香「大丈夫ですか?」
   絵里香、篠原を触る。
   しかし篠原はぴくりとも動かない。
絵里香「だめ、死んでるみたい」
絵里香、首を左右に振り、三宅の方を   見る。
   三宅、いつの間にか閉まっているドア   のノブを掴みながら震えている。
絵里香「どうしたの?」
三宅「ぼ、僕駄目なんですぅ死体とか見たの
 初めてで」
絵里香「あんたしょっちゅうゲームで人殺し
 てるでしょうが」
三宅「あれはゲームだからですよ、実際の死
 体となると話は別なんです!医学部の吉池 氏と一緒にしないで下さい」
絵里香「どういう意味よ」
三宅「そっそうだ!警察!警察に連絡しまし ょう」
三宅、バックの中の携帯を取り出す。
しかし携帯の電波が無い。
三宅「ぬお~!電波が!」
絵里香「でしょうねぇ」
三宅「かっ帰りましょう!こんな人が死んで
 る様な所危険ですよ!僕達迄殺されちゃい ますよお」
絵里香「いやよ、あんな雪の中二度と歩きた くないわ」
三宅「そんなあ」
絵里香、玄関の窓を見る。
外の雪はさっきより強くなっている。
絵里香「それにさっきよりさらに酷くなって るわよ、今外歩いたらそれこそ凍死するわ ね」
三宅「だからってこんな所居たら危険ですよ
 !それにまだ犯人が中に居るかもしれない のじゃないですか!」
絵里香「あぁもう、居たら居たでそんときゃ
 そん時でしょ」
三宅「え~」
   三宅、死体をじっと見つめ死体の手に
   ペンが握られている事に気づく。
三宅「こっこれは!」
絵里香「なによ、まさかダイイングメッセー
 ジとか言うんじゃないでしょうね、お約束 の」
三宅「これは、雪男の夜DVD付き限定版の
 付録のボールペン!しかもシリアルナンバ
 ー1番!同士よぉぉ~」
   三宅、目を瞑り敬礼する。
絵里香「そういう奴よね、あんたって」
絵里香、あきれ顔。
絵里香「あ~もう!とにかく、私は暖かい物
 が食べたいの、行くわよ」
   絵里香立ち上がり、奥のドアに向かっ   て歩く。
三宅「まっ待って下さいよぉ、置いてかない で下さい吉池氏~」
   三宅、もたもたと絵里香を追いかける。
○同・リビング・中
   絵里香、ドアを開ける。
   三宅、絵里香の後ろから中を覗き込む。
リビングは沢山の血で汚れている。
リビングのソファーには女1の死体が、床には男2、女2の死体が倒れている。
絵里香「何、これ」
三宅、頭を抱える。
三宅「ひぃぃぃぃっ」
絵里香「なに?これ、もしかして皆死んでる の?」
   三宅、絵里香の腕を引っ張る。
三宅「かっ帰りましょう吉池氏、まだ犯人が いるかも」
絵里香「そっそうね」
   三宅と絵里香、回れ右して帰ろうとす   る。
   突然奥のドアからごそごそと物音がす   る。
三宅「ひっ」
   三宅と絵里香、物音のする方向を恐る   恐る見る。
   絵里香と三宅、ひそひそと話す。
絵里香「誰か居るのかしら」
三宅「きっとこの人達を殺した犯人ですよ~ 早く逃げないと」
   三宅と絵里香、物音のするドアを緊張   の面持ちで見つめる。
   奥のドアがゆっくりと開く。
   三宅、絵里香の腕にしがみつきごくり   と唾を飲む。
   奥のドアから南条が出てくる。
南条「あれ?まだ生きてる人居たんだ?」
三宅「ぎゃぁぁぁぁ~」
三宅、絵里香から手を離し逃げる。

○同・廊下
三宅が猛ダッシュで走っている。

○同・玄関・前
   三宅、猛ダッシュで外に出る。
   外はものすごいブリザード。
三宅、雪が顔にかかって目を細める。
三宅「うっ」
三宅、凍えながら立ちすくむ。
三宅「吉池氏、無事ですか?」
   三宅、後ろを振り返るが誰も居ない。
三宅「あれ?吉池氏?」
三宅の顔が硬直する。
三宅「そんな」
   三宅の顔が真っ青になる。

○同・リビング・中
   三宅、ドアから恐る恐る部屋の中を覗   く。
三宅「吉池氏~どこですか~もう殺されちゃ ったんですか~」
中には死体以外の人の気配は無い。
三宅、恐る恐る中に入る。
三宅「居ない」
絵里香の声「何してんのよ」
   三宅、声のする方向を振り返る。
   三宅が入って来たドアの柱に絵里香が   腕を組み寄りかかっている。
三宅「ひぃぃっ吉池氏!ごめんなさいごめん なさい!すいません!迷わず成仏して下さ い!」
三宅、床にひざまずき拝む。
絵里香「勝手に殺さないでくれる?」 
三宅「あれ?無事だったんですか?」
絵里香「まあね、それよりちょっと来て」
   絵里香、三宅の襟首を引っ張る。
三宅「えっちょっ、どっどこに連れてくんで すか?」
三宅、絵里香に引きずられながら奥に   連れてかれる。

○同・ワインセラー・中
煉瓦作りのワインセラーの中には沢山のワインがワイン棚に収蔵されている。
絵里香がドアを開ける。
絵里香と絵里香に引っ張られた三宅が中に入る。
三宅「ここは?」
絵里香「地下のワインセラーよ、ここならし ばらく見つかる心配は無いわ」
三宅「なっ何で吉池氏がこんな所知ってるん です?」
南条の声「僕が教えたからさ」
   ワイン棚の陰から南条が出てくる。
三宅「ひぃぃぃ!あっあなたはさっきの殺人 鬼!」
三宅、たじろぐ。
絵里香「違うわよ馬鹿」
   絵里香、三宅の頭を叩く。
三宅「ほえ?」
絵里香、南条の方を手で差し伸べる。
絵里香「この人は南条秀樹さん、このペンシ ョンの宿泊客の一人よ」
三宅「だから!宿泊客兼殺人鬼でしょ?この 人」
三宅、南条を指差す。
絵里香「違うわよ」
南条「ははは、殺人鬼とはまた悪人に見られ たもんだ」
三宅「じゃっじゃあさっきのあの死体は?一 体誰が殺したんですか?」
南条「そうだね、まずはそれを説明しないと いけないかな」
   南条、煙草に火を付け、口に咥える。
南条「事件は昨日の朝に起こった、宿泊客の 一人が客室で首を吊っていたんだ」
三宅「自殺ですか?」
南条「ああ、最初は皆そう思っていたんだ、 けど」
三宅「けど?」
南条「遺留品の財布の中に三日後に行われる ラビッツのライブのチケットとファンクラ ブの会員証が入っていたんだ」
三宅「それはおかしいですね!」
三宅、眼鏡のフレームを中指で触る。
絵里香「何でよ?急に死にたくなったんでし ょ?」
三宅「ファンクラブに入る位好きなんですよ、 ライブを目前に死ぬなんてありえないです よ、僕ならライブが終わってから死にます」
絵里香「そうなの?」
三宅「そうですよ!しかも今をときめく人気 アイドルラビッツのライブですよ!ファン なら匍匐前進してでも行きますよ!」
絵里香、腕組みをして三宅に微笑む。
絵里香「ふ~ん、三宅君は私よりその人気ア イドルグループの方が好きなのね、そ~お よ~っく解ったわ」
三宅「えっあっちっ違いますよ、僕は3次元 では吉池氏一筋であります!本当ですよぉ 信じて下さい!」
絵里香「ふーん」
   絵里香、三宅を疑いの眼差しで見る。
南条「僕たちの間でもそれがおかしいって事 になってね、なにしろチケットの番号がか なり良かったらしいから」
三宅「おおっそれならなおのことありえない です!なにしろ良番はオークションで10万 単位で取引される事もあるらしいですから」
絵里香「10万って、そんなの一体誰が買うの よ」
三宅「セレブオタですよ、奴ら洋服とかに金 使わない分金が有り余ってるんですよ、パ ラサイトだし」
絵里香「キモっ」
南条「だけど部屋はドアも窓も中から鍵がか かっていたんだ」
三宅「密室殺人キター!」
   絵里香、三宅の頭を叩く。
三宅「あたっ」
絵里香「あんた声でかい」
三宅「すいません」
南条「結局隣の部屋の客が怪しいって事にな ってね、とりあえず物置に拘束しておいた んだ」
   南条、床に煙草を落とし靴で踏みつぶ   す。
三宅「どうして隣の部屋の人が犯人って事に なったんですか?」
南条「殺されてた部屋と隣の部屋が屋根裏で 繋がってたんだ」
三宅「なるほど、で?その方は今も拘束され てるんですか」
南条「いや、それが昨夜食事を持って行った ら消えてたんだ」
三宅「消えていた?」
南条「ああ」
絵里香「逃げちゃったって事?」
三宅「誰かが逃がしたのかも」
南条「しかもその犯人、どうやら今逃げてい る銀行強盗らしくて拳銃も所持してるみた いで」
絵里香「それで皆殺されちゃったのね」
   南条、頷く。
三宅「そっそれじゃあ僕たちも早く逃げない と殺されちゃうじゃないですか~」
絵里香「逃げるって言っても外吹雪よ」
三宅「でも何とかすれば」
南条「いや、雪を甘く見ない方がいい、この 辺りでも降雪量が多い日はよく死人が出る みたいだから」
絵里香「だって」
三宅「そんな~」
   三宅、頭を抱える。
絵里香「で?今その犯人はどこに居るんです か?このペンションのどこかには居るんで すよね」
南条「ああ、おそらくね」
三宅「おそらく?」
南条「実は犯人が消えてから誰も犯人の姿を 見ていないんだ」
三宅「って事は」
絵里香「今も銃をかまえながらどこかに潜ん でいるって事?」
南条「ああ、警察に電話しようにもこの雪で 電話線が切れて通話できないみたいだし携 帯も繋がらないし」
三宅、不安な顔で天井を仰ぐ。
   ×   ×   ×
   三宅、そわそわしてうろうろしている。
絵里香「ちょっと、落ち着きなさいよ」
三宅「だって殺人鬼と一緒の建物に閉じこめ られてるんですよ!こここ怖いじゃないで すか!」
絵里香「そりゃあそうだけど」
三宅「きっとトイレとか行って一人になった 隙を狙って後ろから襲いかかってくるんで すよ~」
絵里香「ああ、それはあるかもね」
三宅「それで人間業とは思えないような力で 頭とかひねり潰されるんですよ!山の殺人 鬼に!」
絵里香「それこの前あんたが読んでたホラー 小説でしょ」
南条「へー、三宅君はホラーとかそういうの 好きなんだ」
三宅「えっいや、普段はミステリーばっかな んですけど好きな作家さんがホラーも書く もんで」
南条「へえ、ミステリーか、僕もよく読むけ ど三宅君はどんなの読むんだい東野圭吾と か?」
三宅「そうですね、色々読みますが一番好き なのはなんと行っても本格ミステリーです ね」
南条「本格ミステリーかあ」
絵里香、南条の方を見ながら三宅を親指で指す。
絵里香「この人このペンションが好きな本格 ミステリーゲームの聖地だとか言って吹雪 きの中来たんですよ」
絵里香、苦笑い。
南条「そういえば篠原君、ああ殺されちゃっ た子なんだけどね、彼もそんな事言ってた なあ」
三宅「もしかして玄関に倒れてた人ですか?」
南条「ああ、そっか見たのか」
三宅「ええ、手に雪男の夜のボールペンを持 ってました、生きてたらきっと話が合った のに」
   三宅、寂しそうな顔。
南条「そうか、それは残念だったね」
絵里香「そういえばあんたさっきどさくさに 紛れてあのペンパクってなかった?」
三宅「え?あっいっいやっそっそんな事して ないですよ」
絵里香「本当に~なんかめっちゃ怪しいんだ けど」
絵里香、三宅に疑いの眼差し。
三宅「あっ怪しくないですよ!本当本当」
三宅、両手をぶんぶん振る。
絵里香「本当~?」
   絵里香、三宅をくすぐる。
三宅「あ~やめてください吉池氏!すいませ ん!すいません!ほんの出来心だったんで す!」
   三宅、ペンを出す。
絵里香「やっぱりね、後でちゃんと返しとき なさいよ」
三宅「はい~」
   三宅、ポケットにペンを入れようとし   てペンの異変に気づく。
三宅「あれ?」
絵里香「どうしたの?」
三宅「何かこのペン変なんですよ」
絵里香「変?」
三宅「ええ、僕もこのペン持ってるって言っ てたじゃないですか」
絵里香「ああ、そういえば言ってたわね~そ んな事」
三宅「それがこれなんですけど」
   三宅、バックからペンを出し絵里香に   見せる。
絵里香「なんか違うわけ?」
三宅「いえ、全く同じ筈なんですけど」
   三宅、篠原の方のペンを見せる。
   篠原の方のペンには足に傷が付いてい   る。
三宅「見て下さい、ここ、足の部分、歯で噛 んだような痕が付いてるでしょ?」
絵里香「使ってて付いたんでしょ?よくある 事じゃない」
三宅「ないですよ!限定版ですよ!めちゃく ちゃ大事に使いますよ」
絵里香「じゃあどういう事よ」
三宅「おそらくこれは、ダイイングメッセー ジじゃないかと」
三宅、眼鏡のフレームを触りキメ顔をする。

○同・廊下
   三宅と絵里香と南条が歩いている。
絵里香「ちょっと、死体を確認したいってど ういう事よ」
三宅「気になる事があるんです」
絵里香「死体苦手なんじゃなかったの?」
三宅「それはそうなんですけどね」
絵里香「それに見つかったらどうすんのよ、 相手は銃持ってんのよ」 
三宅「なあにこっちは三人居るんです、それ にいざとなったら吉池氏のスゴ技でなんと かなりますよ」
絵里香「人を化け物みたいに言わないでくれ る?」
三宅「南条さん、まずは最初に殺されていたっていう方の死体が見たいんですが」
南条「あっああ、こっちだよ」
   南条が先頭に立って歩く。
三宅と絵里香、南条についてく。

○同・客室・中
   ロフトの柱に山岸悟35首吊り死体がぶ   ら下がっている。
三宅と絵里香と南条が首吊り死体を見上げている。
三宅「うっわあ」
南条「一応警察が来た時の為にそのままにし てあるんだ」
三宅「うっ」
   三宅、口元を手で押さえる。
絵里香「ちょっと、ここで吐かないでよね」
三宅「わっ解ってます」
   三宅、ベッドの下にへたり込む
   三宅、ベッドの下の携帯電話を発見す   る。
三宅の心の声「携帯電話?」
   三宅、携帯電話をこっそりポッケに入   れて起き上がる。
南条「この人が最初に殺された山岸さん、財 布の免許所を見たけど八王子に住んでたら しいんだ」
三宅「で?そのチケットっていうのは?」
南条「ああ、これだよ」
   南条、山岸のバックの中をあさり、財   布を取り出し、財布の中に折り畳んで   あるチケットを取り出す。
   チケットにはアリーナ席SS20番と書   かれている。
三宅「おぉ、アリーナ席のSS20番!めちゃ くちゃいいじゃないですか!」
南条「だろ?」
三宅「これちょっと預かっててもかまいませ んか?」
南条「えっああ、まあ僕は構わないけど」
絵里香「あんたどさくさまぎれにパクるつも りじゃないでしょうね」
三宅「えっちっ違いますよ!僕は純粋に犯人 確保に協力しようと」
絵里香「本当に~?」
   絵里香、疑いの眼差しで三宅を見る。
三宅「本当ですよ~」
   三宅、自分の財布にチケットを入れる。
   三宅、山岸の死体を観察する。
三宅「首吊り以外の外傷は無さそうですね」
南条「ああ、おそらく薬か何かで眠らせた後 吊ったんじゃないかってのが大胸の意見だ よ、ほら」
   南条、棚の引き出しに入っている薬入   れに入っている睡眠薬を見せる。
三宅、睡眠薬を観察する。
三宅「睡眠薬ですか」
南条「どうやら常用してたみたいだね」
三宅「これを犯人が利用したと」
南条「ああ」
三宅「屋根裏ってのはどこにあるんですか?」
南条「ああ、ここだよ」
   南条、ロフトの階段を上がる。
三宅と絵里香、南条についていく。
ロフトの奥の方の天井に屋根裏に続く扉があり、タンスに登ると入れるようになっている。
三宅、タンスに登り、屋根裏の扉を開き屋根裏を覗く。
三宅「うわっずいぶん暗いんですね」
南条「ライト持ってこようか?」
三宅「お願いします」
三宅南条の方を見る。
南条、一旦部屋を出る。
   
○同・屋根裏
   三宅が上半身を屋根裏に入った状態で   ライトで屋根裏を照らしている。
   屋根裏には蜘蛛の巣が張り巡らされて   いて埃も溜まっている。
絵里香の声「どう?隣の部屋と繋がってる?」
三宅「解りません」
   三宅、屋根裏に這い上がる。
三宅「よっと」
南条「まっすぐ行った所に同じ様な扉がある 筈だから」
三宅、匍匐前進して進むと蜘蛛の巣に絡まる。
三宅「うわっ蜘蛛の巣!ひぃぃっ」
絵里香「ちょっと!大丈夫?」
   三宅、せき込みながら進む。
三宅、扉を発見する。
三宅「ん?これか」
三宅扉を触る。

○同・客室・中
   三宅、せき込みながら屋根裏から出て   くる。
絵里香「どうだった?」
三宅「ええ、確かに隣の部屋と繋がっていま した」
絵里香「やっぱり」
南条「犯人はやっぱり七瀬さんで決まりのよ うだね」
三宅「七瀬って?」
南条「ああ、隣の部屋の客だよ」
三宅「消えた犯人ですか?」
南条「うん」
三宅「一応他の死体も確認したいんですがよ ろしいですか?」
南条「ああ」
三宅「っとその前にトイレ!」
   三宅、客室のトイレに入る。
   ×   ×   ×
絵里香、トイレの前で腕組みをしている。
南条、ソファーに座り煙草を吸っている。
絵里香、トイレのドアを叩く。
絵里香「ちょっと!まだ?早くしてよ!」
三宅の声「すっすいませんっちょっとおっき い方でして、もうしばらくお待ちを」
絵里香「はぁ?最悪なんですけど」
   ×   ×   ×
絵里香と南条、ソファーに座っている。
三宅、トイレから出て来る。
三宅「ふぅっ、お待たせしました」
絵里香「あんたねえ、人待たせておいて大す るってどういう事?」
三宅「しょっしょうがないじゃないですかぁ、 生理現象なんですから」
絵里香「ったく」
絵里香、トイレに入る。
三宅「あ、吉池氏も入りたかったんですね」
絵里香の声「うっさいわね!」
   三宅と南条、目を合わせ苦笑い。
×   ×   ×
   絵里香がトイレから出て来る。
三宅、立ち上がる。
絵里香「ふう」
三宅「次の現場に向かいましょう」
南条「もうここはいいのかい?」
三宅「ええ、だいたい解りましたから、ああ そうだ吉池氏」
絵里香「何よ」
   三宅、絵里香にひそひそ話しをする。
   南条、三宅達を怪訝な表情で見る。

○同・廊下
三宅と絵里香と南条が歩いている。
三宅「そうだ、現場検証ついでに犯人探しも やっときませんか?」
絵里香「そっそうね」
南条「えっ危険じゃないかな、相手は銃を持 ってるんだし」
三宅「なあに、こっちは三人も居るんです、 それにこのままのさばらせておく方が危険 だと思いませんか?」
南条「そっそれはそうだけど」
三宅「そんなに心配でしたら、ああそうだ、 何か武器などあれば安心でしょう」
南条「武器?」
三宅「そうだなあ、斧とか鉈とかあると丁度 いいんですが」
南条「鉈、ねえ」
三宅「何か知りませんか、そういった武器に なりそうな物がある納戸とか」
南条「納戸ねえ、いや、ちょっと解んないか な、残念ながら」
三宅「そうですか、残念です、それじゃあ吉 池氏の凄技に頼る他ありませんね」
絵里香、三宅の首を絞める。
三宅「ぐぉっ」
   絵里香と三宅、ひそひそ話す
絵里香「あんた私の事何だと思ってんのよ」
三宅「まあまあ」
三宅、絵里香をなだめる。

○同・客室2・中
三宅と絵里香と南条が入り口から中を覗いている。
机の上には荷物が置いてある。
三宅、クローゼットを覗く。
南条、ベッドのシーツをめくる。
絵里香、トイレのドアを開ける。

○同・男湯・脱衣所・中
三宅と絵里香と南条がうろうろ見ている。
三宅、浴室の扉を開ける。
三宅「いませんねえ」
三宅、浴室の扉を閉める。

○同・リビング・中
ソファーに女2の遺体が転がっている。
床には男と女1の遺体か転がっている。
リビングは血しぶきが飛び散っていて、床は沢山の血が流れている。
ドアを開けて三宅と絵里香と南条が入って来る。
三宅「うっわあ」
絵里香「何度見てもすごいわね」
三宅「宿に居た人達はこれで全員ですか?」
南条「ああ、そこの男性がオーナーでソファ ーに倒れてるのがオーナーの奥さん、床に 倒れている女性が篠原君の彼女だよ」
三宅「それに玄関の篠原さんに二階の山岸さ んですね」
南条「それから七瀬君と僕で全員だよ」
三宅、遺体を観察する。
遺体には全て銃で撃たれたような痕がある。
三宅「全員銃で撃たれてるんですね」
三宅、しかめっ面で遺体を見る。

○同・キッチン・中
三宅と絵里香と南条が入って来る。
三宅「ここにも居ない」
絵里香「お腹すいたわね~何か無い?」
絵里香、冷蔵庫を開けて板チョコを取り出して食べる。
三宅「あれだけ死体見た後によく食べる気に なりますね~」
絵里香「もう慣れちゃったからね~」
三宅「ああ、医学部の実習は解剖もあります からねえ」
絵里香「そゆこと~」
南条、そわそわしている。
三宅、南条をちらりと見る。

○同・客室3・中
三宅と絵里香と南条が中をうろうろしている。

○同・女湯・浴室・中
   三宅と絵里香と南条がうろうろしてい   る。
三宅、タイル張りの床に滑る。
三宅「うわっとととっ」
三宅、こけて床に頭を打つ。
絵里香、三宅を見てあきれる。

○同・納戸・前(夕)
   三宅と絵里香と南条が緊張した顔でド   アの前に立っている。
三宅「後は、この部屋だけですね」
   三宅と南条、目を合わせる。
絵里香「どうする?中に犯人が居たら」
三宅「その時はその時ですよ」
絵里香「そうね」
三宅、ごくりと唾を飲む。
三宅、恐る恐るドアノブを触る。

○同・納戸・中(夕)
納戸にはスコップやデッキブラシ、バットなどが収蔵されている。
三宅、ドアを開けて入って来る。
絵里香と南条、三宅に続き入って来る。
絵里香「居ない」
三宅「おかしいな~ここに居ると思ったんだ けど」
絵里香「は~緊張して損した」
三宅、バットを見る。
三宅「でっでも武器になりそうな物は見つか った訳だし、これで犯人と遭遇しても安心 じゃないですか」
三宅、バットを持つ。
絵里香「それもそうね」
絵里香、デッキブラシを持つ。
三宅「でも、犯人どこ行っちゃったんでしょ う」
絵里香「さあね、雪が弱まったのを見計らっ て逃げちゃったんじゃない?」
三宅「そうでしょうか、あっ」
絵里香「どうしたの?」
三宅「まだ探してない所がありました」
   三宅と絵里香と南条、向かい合う。

○同・キッチン・中(夕)
   バットを持った三宅とデッキブラシを   持った絵里香と木の棒を持った南条が   入って来る。
絵里香「キッチンはさっき探したじゃない」
三宅「ええ、でもさっき見てなかった所があ ったんです」
三宅、床にしゃがみ込む。
そこには床下収納の扉がある。
絵里香「床下収納?でもこんな所に人が隠れ られるの?」
三宅「生きた人間は無理でしょうね、だけど」
三宅、床下収納を開ける。
三宅「死んだ人間なら、ほら」
   床下収納には折り畳まれた七瀬登40の   死体が入っている。
絵里香「あっ!」
三宅「居ましたよ」
   南条、突然絵里香に後ろから木の棒で   殴ろうとする。
三宅「危ない!吉池氏!」
絵里香「え?」
絵里香、後ろを振り返る。
南条、木の棒で絵里香に襲いかかる。
   三宅、南条にタックルする。
   南条、三宅に襲いかかる。
絵里香「八郎!」
   絵里香、デッキブラシで南条を倒す。
×   ×   ×
南条、ロープで縛られて座らされている。
三宅と絵里香、立って南条を見下ろしている。
絵里香「まさか本当に南条さんが犯人だった なんてね」
三宅「厳密に言うとその後の殺人の犯人だっ た訳なんだけどね」
絵里香「どういう事?」
三宅「第一の殺人の犯人はこの人じゃないよ」
絵里香「何?じゃあ他に犯人が居るって事?」
三宅「いや、元々犯人なんて居なかったんだ」
絵里香「え?」
三宅「首吊りした人の携帯電話にプロポーズ の断りのメールが残っていたよ、多分その メールで死のうと思ったんじゃないかな」
南条、ぼそっとつぶやく。
南条「だから言ったんだよ、俺じゃないって」
三宅「屋根裏も確かに繋がってはいたけど人 が通った痕跡は無かったよ」
絵里香「じゃあ無実の罪をきせられて殺さな くていい人迄殺しちゃったって事?何でそ んな」
三宅「多分今ここで捕まる訳にはいかなかっ たんだろうね、銀行強盗しなくちゃならな い程困っていたみたいだから、でしょう?」
南条「ああ……」
南条、天井を眺める。

○(回想)病院・診察室・中
医者と南条が向かい合って座ってる。
南条「え?移植するのに一千万もかかるんで すか?」
医者「ええ、日本では15歳未満はドナーにな れないのでアメリカで手術しなければなり ません、それには最低でもそれ位は」
南条「そんな」
   南条、俯く。

○(回想)同・病室・中
薄暗い病室。
南条恵4がベッドで寝ている。
南条が入って来て恵の寝顔を眺めている。
南条、泣く。

○元のキッチン(夕)
南条が天井を眺めている。
南条の目から涙が流れる。
三宅、窓を眺める。
窓から見える雪はやんでいる。
三宅「ああ、雪もやんできたようですね、そ ろそろ警察も来る頃でしょう」
絵里香「携帯繋がったの?」
三宅「ええ、首吊りしたかたの携帯電話がな んとか繋がるやつでしてね、トイレでちゃ ちゃっと」
絵里香「だからトイレ長かったのね」
三宅「ええ」
窓から夕日が差してくる。
三宅、窓から外の夕日を眺める。
絵里香、三宅を眺める。
パトカーのサイレンの音。
銃声。
三宅・絵里香「え?」
三宅と絵里香が振り返ると縄抜けした南条が銃を持って死んでいる。
南条のズボンはめくれている。
絵里香、口を手で押さえる。
三宅目を見開く。

○恵比寿大学・構内(朝)
   三宅が小説を読みながら歩いている。
   三宅の後ろから絵里香が掛けてきて、   三宅の背中を押して横に並ぶ。
絵里香「おっはよ~」
三宅「ああ、おはようございます吉池氏」
絵里香「全く、八郎のおかげで連休は散々だ ったわよ」
三宅「すいません」
絵里香「でも悲しい事件だったわよね、娘さ んの手術費用の為に銀行強盗してたんでし ょ?」
三宅「ええ、でも良かったんでしょうか、僕 がよけいな事しなきゃあの親子は助かった かもしれないのに」
絵里香「いいんじゃないの?娘を助ける為と はいえ沢山の人間を殺しちゃったんだから、 しょうがないよ」
三宅「でも……」
絵里香「あっそうそう、例の女の子の事なん だけどさ、うちの教授に話したらうちの大 学で手術費用出してくれるってさ」
三宅「え?」
   三宅、キョトンとして立ち止まる。
絵里香、三宅の前を歩く。
絵里香「まあこれも普段から真面目に首席を キープし続けてきたこの私のおかげかしら ね~」
三宅、笑顔になる。
三宅「よっ吉池氏!やっぱり吉池氏っていい人だったんですね!」
三宅、絵里香の元に駆け寄る。
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